70年代の一時期、彼等独特の粘りのある躍動感が薄れたように感じますが、本作はハイ・テンポのR&Rが多めに収められているせいか、初々しい勢いとともにこれを取り戻しているように感じます。
実を言えば数あるStones作品のなかで、個人的には"Banquet"、"Bleed"、"Sticky Fingers"などについで5指に入れている好みの作品です。

「真夏の夜のドライブ・ミュージック」
おすすめ度　★★★★☆

ロン・ウッド加入後、最もバンド・サウンドとしてまとまりを見せたアルバム。効果的に配置された曲構成が、全体的に疾走感を醸し出しています。前作女たちよりもスムースで若々しい感じ。バックのクールな演奏にかぶせて、ミック・ジャガーのボーカリストとしての巧さ、幅広い表現力が十二分に発揮されています。なめらかにして饒舌、それでいて情熱的で官能的。ジリジリとアクセルを踏み込んでしまいそうな気分になります。アルバムの評価としてはそれほど認められてはいないようですが、蒸し暑い夏の夜に、車の窓を開けて飛び込んでくる風を浴びながら聴くと、このアルバムの良さが実感できることと思います。ラストに収められたジャズ・バラード風の一曲は、キースの天才と歌詞にその人柄が垣間見えてとても趣き深い佳曲に仕上がっています。


曲目リスト

1.Dance, Pt. 1
2.Summer Romance
3.Send It to Me
4.Let Me Go
5.Indian Girl
6.Where the Boys Go
7.Down in the Hole
8.Emotional Rescue
9.She's So Cold
10.All About You