1975年発表。レッド・ツェッペリン6枚目のアルバムにして唯一の二枚組のスタジオ録音である。1969年2月にデビュー・アルバムを発表して以来ほぼ1年1作の割合でレッド・ツェッペリンはアルバムを発表し73年までに5枚のアルバムを発表してきたが1974年はその恒例たるアルバムの発表が無かった。そして1975年に二枚組の本作が発表されるのである。 それはやはり前作の『聖なる館』がファンの期待するレッド・ツェッペリンではなく、ジミー・ペイジがこの不世出のロック・ユニットで色々やってみたい事を試したアルバムだったことが関係しているのだと思う。最終作となってしまった『In Through The・・・・』でもそうだし、ある意味IIIもそうなのだろうが、ジミー・ペイジは多種多様な可能性をこの不世出のロック・ユニットであるレッド・ツェッペリンに感じていて、試してみたくてたまらないのだが、I・II・IVの路線があまりにファンの気持ちとレッド・ツェッペリンに対するイメージを確立してしまっため、ある種のジレンマにおちいっていたと思われる。 30年の時を経て、今レッド・ツェッペリンの全アルバムを聴き直すとジミー・ペイジのそう言った気持ちを感じずにはいられない。III・Vそして『In Through The・・・・』で試したかった音楽は80年代・90年代では多くのミュージシャンが理解して、そのDNAは今や現ミュージック・シーンの中核にあると思える。不世出のロック・ユニット、レッド・ツェッペリンの全てを引き出したかったジミー・ペイジの意図は30年後の今でやっと理解できるものだったのだ。 さて、本作だが不世出のロック・ユニット、ここに全開の大傑作である。二枚組のでかいスペースを使い切ってジミー・ペイジは自らのやりたい音を描き切っている。駄曲は1曲も無い。 ひとつだけ残念なのは、IIIでもそうなのだが、LPジャケットだから出来たであろう、ジャケットを回転させたり、スライドさせたりして色々な顔を見せてくれるジャケットの試みがCDではフィックスして動かなくなってしまったことだ。今聴く人はCDでこんなもんだと思ってジャケットを見るかと思うと悔しくて仕方がない。荒木飛呂彦氏の作品集『JOJO A GO!GO!』ではIII風の試みをやってくれているが、きっと同じことを思ってのことだろう。紙ジャケット全盛になりつつある今だが、このジャケットを復活させて現代のリスナーに見せてやりたいなぁ、と思うのは僕だけではあるまい。発売元ガンバレである。
レッド・ゼッペリンのキャリアの頂点に位置する2枚組の大作にして1970年代ロックを代表する輝かしい傑作です、
本作の内容の多彩さはビートルズ・ホワイト・アルバムに匹敵し、ロック史上の2枚組作品の頂点として双璧です、Pink Floyd The Wallと3組でゴールデン・トライアングルと呼んだほうがふさわしいかもしれません、
この後ゼップは活動中に2枚のスタジオ録音アルバムを発表しますが、本作で示されたある方向だけを拡大したものであったことは一聴瞭然です、
Jimmy Page,Robert Plantの長いソロ・キャリアの全作品のアイデアもすべて本作に詰まっています、現在丁寧に聴きなおしてみれば、グランジやオルタナのアイデアさえも既に実践されていたことに気づきます、
レッド・ツェッペリンが自分たちの多彩な音楽性をどーんと披露した2枚組、傑作アルバム。ハードに迫る「Custard Pie」「The Rover」「In My Time Of Dying」、幻想的な名曲「Kashmir」、ポップで繊細な印象を与える「Bron-Yr-Aur」「Down By The Seaside」「Ten Years Gone」「Night Flight」「Black Country Woman」、人気キーボーディストのイアン・スチュワートとの風変わりな「Boogie With Stu」など、バラエティに富んだ作品になっているが、特にツェッペリンを知らない人には、ファンキーでソリッドな「Trampled Underfoot」や「Wanton Song」のグルーヴ感に驚いてほしい。それにしてもジョン・ボーナムのドラムの言葉にならないものすごさよ。(麻路 稔)